相続放棄Q&A NO3
司法書士の杉山と申します。
相続放棄とは、被相続人の相続が開始されたことを知ってから、3ケ月以内に家庭裁判所に申立することによって、被相続人の遺産を全面的に承継を拒否することができる手続きを言います(民法939条)。
単に、相続財産を取得しないことは、相続放棄ではありません。
相続放棄は、相続が開始されたことを知ってから3ケ月以内とされているため、被相続人が亡くなって3ケ月経過した場合であっても、相続放棄を認めた判例があります。
相続の開始があったことを知った時とは、相続人が相続開始原因たる事実の発生を知り、かつ、そのために自己が相続人となったことを覚知した時です。
しかし、被相続人の遺産を売却したりしますと、法定単純承認となり、相続放棄ができなくなります。
そこで、相続放棄について、よくあるQ&Aを作成しました。
Q3.相続放棄をしたのですが、被相続人に衣服、日用品、壊れた中古自動車があります。これらを処分した場合に、どのような影響がありますか?
A3.被相続人の相続財産を処分した時、法定単純承認とされ、相続放棄できなくなります。また相続放棄後でも、同様に、相続財産を隠匿、消費した場合、法定単純承認とされ、相続放棄できなくなります。
ここでの、「処分」にあたる行為として典型的なものは、以下のようなものがあります。
・相続財産を売却する
・相続人の有していた債権を取り立てる(最判昭37.6.21)
こうした相続財産の処分行為があると、被相続人の「相続財産を相続するという意思」が黙示的に表示されたと考えられるため、法定単純承認とされます。
もちろん処分した行為さえあれば相続放棄を一切認めないという機械的なものではなく、相続開始を知らないまま相続財産を処分したようなケースにおいて、法の趣旨に照らして単純承認を擬制するだけの根拠がないと判断した判例もあります(最判昭42.4.27)。
ただ、原則的には上記行為があれば単純承認が擬制されるものと考えた方が、よろしいかと思います。 この規定をあまり厳密に適用すると、たとえば亡くなった方の衣服など細々した遺品を捨てることもできなくなってしまいます。
一般的には、消費とは、相続債権者の不利益となることを承知の上で、相続財産を費消することを言います。
そこで、被相続人の上着やズボンを1着ずつ譲渡した行為について「処分」には該当しないとした判例もあります(東京高判昭37.7.19)。
同様に、被相続人の火葬費用の足しにするため相続財産を支出したような場合にも、「処分」に該当しないと判断した判例ものがあります(大阪高決昭54.3.22)。
上記の趣旨からすれば、壊れた中古自動車が、財産的な価値がない場合、その中古自動車を廃車処分したとしても、法定単純承認とは判断されないことも考えられます。 しかし、法定単純承認に該当するか、どうか、微妙な判断を必要とします。
相続放棄について不明な点がありましたらお電話ください。
TEL;03−6915−5461
司法書士 杉山浩之
東京司法書士会 登録番号 4396号
認定番号 901010号